こんにちは!SEES NOTE 編集部です。
inadani sees(seesと呼んでいます)は、「農と森のインキュベーション」という、
わかりそうでいて、ちょっとわかりにくい看板を掲げながら、
伊那谷の農林業や地域資源を使った事業、地域の風景・風土を守り、
伝えていくような取り組みを応援するべく活動しています。
2年前にオープンしてからというもの、おかげさまで少しずつ sees のことを知っている方も
増えてきました。イベントに参加してくださる方の属性もさまざまです。
「インキュベーション」というと、堅い印象があったり、大きなビジネスを生み出すような「自分とは遠い世界の話かな…」と思う人も少なくないかもしれません。私もそうでした。
そういったインキュベーションの考え方のほうが、もしかしたら一般的かもしれませんね。
でもseesで目指しているのは、もう少しあたたかみのある、人の体温や地域の風土が
感じられる仕事がこの場所を通して生まれていくこと。
それは、必ずしも大きなビジネスだけではないと考えています。
前置きが長くなりましたが、イベントレポートではイベント内容のほか、どんな人たちが
集まっているかなど、seesの雰囲気を知っていただけたらいいなと思っています。
seeds の持ち寄り会は、地域の企業や大学、農家や料理人が「農」や「森」に関するアイデアや技術(=seeds)、困りごとを持ち寄り、事業の発展やコラボレーションが生まれることを目指す会です。
農家さんや木こりさんのような、農林業に直接関わる方はもちろん、地域の企業や大学、飲食店や宿泊業、行政関係者やクリエイターなどなど、地域の資源を使って事業や活動をしている人や、そんな人とつながりたい人なら大歓迎!
今回は伊那谷を中心に、長野県内で活動する22名の方が集まりました。
まずは inadani sees マネージャーの奥田から、sees が大切にしていることや、本イベントの説明がありました。
sees が目指しているのは、卵が自然と孵るようなあたたかい場。「incubation」のもともとの意味(=孵化)に立ち返り、私たちがseesのオープン前から大事にしている言葉です。そして、SEES CAMPというイベント名には、キャンプのようにみんなで集まり、みんなでつくる場にしたいという想いが込められています。主催者、発表者、参加者のように、役割は違えど、その場に集まったみんなが「一緒に“場”をつくる」という気持ちで臨むほうが楽しいと思いますし、そこで生まれるコミュニケーションや、共有する時間の質が変わると考えています。
簡単なオリエンテーションのあとは、さっそく「SEEDS」の発表に移っていきました。
今回発表いただいたのは、以下の8つのSEEDSです。
①「自然盆栽」で独立を目指す大学院生(牧嵜遼詩さん)
②伊那谷の農業がつづくために、私たちにできることとは?(伊那谷地域推進協議会)
③地域の特色を「小屋」で表現するには?(都築木材株式会社)
④地域資源を活用した取り組みをDAOで展開したい(GRASSROOTS)
⑤伊那谷の地域資源を生かしたティー商品をつくりたい(オチャジカンパニー)
⑥地域材を余すことなく活用する事業を展開中(株式会社伊那炭化研究所)
⑦スマート林業のテクノロジーを一般の人にも楽しんでもらうには?(精密林業計測株式会社)
⑧木材×食で未利用材活用をしたい(瑞穂木材)
では、それぞれのSEEDSを簡単にご紹介します。「公開OK」のご了承をいただいた方に関しては、発表資料も載せるのでぜひご覧ください!
①自然盆栽で独立を目指す大学院生(牧嵜遼詩さん)
信州大学 大学院で森林生態学を学んでいる牧嵜さん。中学生の頃から盆栽の世界に入り、卒業後は盆栽を生業にすることを決意し、現在は盆栽ワークショップやイベント出店などで活動中。事業化に向けてハードルに感じているという、「情報発信」や「サービス内容」についてアイデアやアドバイスを募っていました。
②伊那谷の農業がつづくために、私たちにできることとは?(伊那谷地域農業推進協議会)
伊那谷地域の持続可能な農業につながる「きっかけづくり」のために生まれた協議会。上伊那地域の農家さんを中心に構成され、これまでに交流会や講演会などの活動を行ってきました。補助金をもとに運営されていたため、それがなくなったいま、どのような形で活動を続けるかについて相談してくれました。
③地域の特色を「小屋」で表現するには?(都築木材株式会社)
木材の輸入販売や、国産材の製材、プレカット加工などを行う都築木材さんから、今回は「小屋」に関するSEEDが発表されました。規格(木造建築デザイン)を通じて、開発する国と地域の特色を表現する「小屋」の可能性を模索中。被りものが変わることで様々な地域を表現する長野県のキャラクター「アルクマ」を例にお話いただきました。
④地域資源を活用した取り組みをDAOで展開したい(GRASSROOTS)
中央集権的な組織のあり方に対し、「分散型自律組織」といわれるのが「DAO」です。共通のミッションのもとに集まった人たちが、協力し合いながら組織(コミュニティ)を運営するのが特徴。今回は「地域資源を活用した取り組みをDAOで展開したい」という発表でした!
⑤伊那谷の地域資源を生かしたティー商品をつくりたい(オチャジカンパニー)
石川のお茶屋さん生まれの丸谷さんがお茶の魅力を伝えるためにはじめた「オチャジカンパニー」。お茶を通して、“呼吸がひとつ深くなる”モノやコトを提供することを目指しています。今回は「伊那谷の地域資源(自然のめぐみ、風土、暮らし、人)を生かしたティー商品をつくりたい」というご相談です。
⑥地域材を余すことなく活用する事業を展開中(株式会社伊那炭化研究所)
炭に薪割りにアロマと、最初は「何屋さん?」と思うかもしれません。その多岐にわたる事業の根底には、「地域材を無駄なく活かしたい」という思いがあります。商品を扱っていただける方や、薪割り体験を開催できる場所を募集中です!
⑦スマート林業のテクノロジーを一般の人にも楽しんでもらうには?(精密林業計測株式会社)
ドローン計測やAIなどのテクノロジーを活用し、森林情報のデジタル化をしている「精密林業計測株式会社」。普段は行政や企業さんとのやりとりが多いけれど、「いつか一般の方が楽しめることを企画してみたい」というご相談をいただきました。技術的なことは“一旦無視”して、楽しそうなアイデア募集中です!
⑧木材×食で未利用材活用をしたい(瑞穂木材株式会社)
木島平村から、木材生産の川上から川下までを担う「瑞穂木材株式会社」さんが来てくれました。今回のSEEDは「木材×食」。「和食」は、「自然の尊重」が土台となった日本人の伝統的な食文化ですが、そんな食の思想と木材を掛け合わせたら、どんな景色が見えるだろう?日本の固有種である「杉」に焦点をあて、木を「食べる」ことの可能性を探っています。
SEEDSの発表のあとはグループに分かれ、参加者の方がそれぞれの視点で考えたアイデアや疑問などを、発表者の方と一緒に話していきました。
この日参加したのは、普段から「農」や「森」に関わっている方ばかりではありません。「地域で活動している人とつながりたくて」という方もいれば、「なんだか面白そうだったから」と参加してくださった方もいます。
対話を通して「いつもと違う視点」を交換することは、誰かが撒いた種をみんなで育てようとすることに似ています。ある人は水や肥料を与えてくれるかもしれませんし、またある人は、土壌に対するアドバイスをくれるかもしれません。専門家でなくても、誰かの素朴な疑問やちょっとした思いつきが、種が育っていくきっかけになることもあるのだと思います。
対話の時間や、最後の交流会でも、そこここでみなさんが盛り上がっている様子が印象的でした。
作物が育つのにも、それぞれに必要な時間があるように、一回の企画の中で正解のようなものにたどり着くのは難しいかもしれません。それでも、発表したみなさんが目指すものに向かって少しでも歩みを進められたり、一度立ち止まって「そもそも」を見つめ直したりできる、そんな時間をつくるのがseesの役割の一つなのかなと思っています。
これからもさまざまな「SEEDS」に出会えるのを楽しみにしています!
またSEEDSの持ち寄り会でお会いしましょう!
inadani sees では2025年7月から、農と森の相談会「sees table」をはじめました!
種を持ち寄り、みんなで視点を交換する「SEEDSの持ち寄り会」に対して、「sees table」は個別の相談会。農林業・食・地域資源などを活かしたあなたの企てに、seesスタッフが丁寧に向き合います。
「何かやりたいけど、どう動けばいいかわからない」というふわっとしたご相談から、「こんな人や企業、知りませんか?」という具体的なご相談まで、幅広く受け付けております。ぜひお気軽にお申し込みください!
▽ 詳細は下記のページをご覧ください。